大きな案件の失注をきっかけにAPMPを学び、同じお客様から翌年ほぼ全ての案件を受注することができました。
今回はBOK勉強会や日本支部の各種イベントに積極的に参加してくださっている楢崎さんにインタビューいたしました。
--現在のお仕事とこれまでのご経歴を教えてください。
「研修、セミナー開催支援」などを行う国際協力関連団体にて社内へプロポーザルマネジメントの普及と標準化、プロポーザル作成支援を行っております。
同団体に新卒で入社し、国内における国際協力の現場やバックオフィスでの業務を中心に、転勤も含めて、多様な部署で勤務してきました。
--APMP日本支部を知ったきっかけを教えてください。
数年前、大きな案件を失注した際に、プロポーザル作成について体系的にまとまった手法を学ばねば、ということになり、式町さんを講師として社内研修が企画され、その研修に参加したことがきっかけでした。とても強く印象に残っており、まさに目からウロコでした。
お客様は官公庁が中心であり、昨今入札案件における競争が激化する中、提案力の強化は組織において大きな課題でした。
--実施した社内研修の内容について詳しく教えてください。
プロポーザルマネジメントに関する研修を複数部署のメンバー20名程度で受講しました。
その後、若手社員を中心に実案件をベースとしたワークショップを月1回、4カ月間程度実施しました。
そのワークショップを通じ、第三者視点でアドバイスをいただくことで、独りよがりな提案になっていることに気づかされたり、提案プロセスにおける課題を痛感させられたりしました。逆に自分たちが当たり前だと思っていたことが、価値のあることだと再発見する機会にもなった、と参加したメンバーが感銘を受けておりました。
その後、本研修のきっかけとなった失注案件のお客様より翌年ほぼ全ての案件を受注することができました。
--それは素晴らしいですね。APMPの会員になった理由・決め手を教えてください。
当時はプロポーザル支援に特化した部署というのはありませんでした。開発・企画部という部署で新規案件獲得という観点で社内プロセスの標準化を進めていました。研修の成果もあり、組織内にプロポーザルマネジメントに取り組むべきという意見も一部出るようになりました。
ワークショップ終了から2ヵ月後くらいに、米国の関係機関に2週間ほど研修に行く機会がありました。偶然だったのですが、その機関では既に提案書作成にプロポーザルマネジメントを採り入れていました。非常に体系だった提案プロセスや進め方、それに合わせた組織の在り方に感銘を受け、APMPの手法をもっと知りたいとAPMPに入会しました。
--プロポーザル支援を行う専門組織の立ち上げについてお話をお聞かせください。
APMPに入会後、自分自身で学習をしたり、社内へプロポーザルマネジメントを広めていこうとしましたが、なかなか苦労しました。専門組織で活動していたのが一人だったこともあり、この活動をどのように広めればよいのか悩んでいました。
小さな案件をターゲットに研修や勉強会を行ったり、資料作成を支援したり、地道な働き掛けを通じ小さな成功体験を増やしていきました。社内のさまざまな提案書に目を通し、改善案をアドバイスしていくことで社内でも少しずつ信頼を獲得していくことに繋がりました。
プロポーザルマネジメントを学び始めた当初は、社内での取組みが思うようにいかず、APMP日本支部のイベント(ミートアップ)に参加し会員の皆さんと悩み共有をした際には、孤独な取り組みの辛さで正直泣きそうでした。今振り返ると自ら社内で声を掛け、一歩一歩愚直に活動していく、信頼ができる方からアプローチしていく、そういった草の根的な活動が改めて大切だったんだな、と感じています。
--楢崎さんのお人柄にも現れている丁寧かつ想いのこもった活動ですね。会員であることで得られているメリット、ベネフィットは何ですか?
自分のやる気さえあれば、提案活動全般の体系だった知識を色々な形で得ることが出来ることです。中でも、APMP日本支部が企画する勉強会で知り合った会員の皆さんに相談したり、事例を聞いたり出来ることが一番の魅力と考えています。
勉強会に入ったばかりの頃、何もわからない中でも他の会員の方が親切に教えてくださったり、発注者の立場の話を聞かせていただいたり、現場のリアルな声を聞くことができました。当初は他の参加者の方に相談や質問することに気後れすることもあったのですが、現在ではいろいろと相談できる関係性を築くことができました。
-- APMPから学んだことで、実務で取り入れていることはございますか?実務に取り入れることでどのような成果がございましたか?
取り入れていることは「考え方」と「ツール」の2つです。
顧客は何をしたいのか、何が課題なのか、という視点を常に持ち続けるようにしており、社内で自身が講師となり研修する際も、それを第一に伝えています。
大きな案件が終わった後に顧客のコメントを持ってきてもらい、ラーニングレビュー ※1のテンプレを自社用にカスタマイズをして案件振り返りを実施するようにしています。振り返りを実施することで「考え方」を学べるように感じています。提案での苦労もホットなうちにフィードバックを与えることで、効果を実感してもらいやすい手ごたえも感じています。実際に来年に向けた活動を前倒しし、顧客分析などのアクションに繋がってきています。
加えて、APMPが提供してくれている有効な「ツール」も利用できる部分から利用しています。使い慣れないツールを他者に広めていくのは難しいと思いますので、自分自身がAPMPの各種ツールを活用し、自社に合わせたツールの活用を広めていくように意識しています。
また、副次的な効果としてAPMP以外で学んださまざまな知識がAPMPでの学習を通じ、線として繋がるという経験もしました。
※1 ラーニングレビューとは、提案書提出後に実施する提案活動の振り返り会であり、組織の提案プロセスの改善を図る活動のことです。
-- APMPの学びを今後どのように活かしていきたいですか?
プロポーザルマネジメントの手法が社内で定着するよう、BOKに書かれている内容を自社の事例などを使いながらわかりやすく説明できるようにしたいと考えています。受注した提案書のナレッジ化なども進めています。
また、人事と共に新人研修や年次の社員研修に組み込むことも検討しています。中長期的には、プロポーザルマネージャーの育成、輩出も取り組んでいきたいと考えています。
--APMP日本支部で今後どのような活動をしていきたいですか?
私にとって勉強会は非常に有意義なものでした。今後は勉強会やその他イベントで、皆さまに恩返しできるよう、出来ることから実施していきたいと考えています。
同じようにプロポーザルの支援を行う専門組織を立ち上げる方同士の相談会なども企画としては面白いかもしれませんね。
--会員の方、これから会員になろうとしている方へのメッセージをお願いします。
より良い提案をするためのツールとして、APMPの手法は非常に有効ですし、同じ目的を持つ仲間の皆さんと繋がれるのは大きな財産と感じています。
普段やっていることを体系的に学ぶということは実は凄いことです。目的を理解してひとつひとつの行動を取るということの重要性を感じています。
今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。
-- 楢崎さん、貴重なお話をありがとうございました。特にこれから専門チームを立ち上げる予定の方にとっては、とても示唆に富む、現場最前線の生の声だったと感じています。今後も日本支部の活動でご一緒できることを楽しみにしております。